
カスハラ対策義務化
11月になりました。
気持ちの良い秋晴れからスタートです。
今年もあと2ヶ月。
年末へ向けて張り切ってまいりましょう。
今月の話題はこちら。
カスタマーハラスメント対策が義務化!中小企業が今すぐ取り組むべきこと
2026年10月1日から、すべての企業にカスタマーハラスメント対策が義務付けられました。
近年、顧客や取引先などからの暴言、過度な要求、長時間の拘束といった「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題となっています。
こうした行為は、従業員の精神的な負担を増大させるだけでなく、休職や離職、人材不足、職場環境の悪化など、企業経営にも大きな影響を及ぼします。
これまでも企業には従業員の安全や健康に配慮する義務がありましたが、2026年10月1日からは、改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメントを防止するための具体的な措置が義務化されました。
今回の改正は、企業規模や業種を問わず、すべての事業主が対象です。
今回は、カスタマーハラスメントの判断基準と、中小企業が取り組むべき具体的な対策について解説します。
1.カスタマーハラスメントとは?
厚生労働省の指針では、職場におけるカスタマーハラスメントについて、次の3つの要素をすべて満たすものとしています。
① 顧客、取引先、施設利用者などの言動であること
② その言動が、業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超えていること
③ その言動によって、労働者の就業環境が害されること
例えば、次のような行為が該当する可能性があります。
・従業員に対して大声で怒鳴ったり、人格を否定する発言を繰り返したりする
・土下座や不当な金銭補償を要求する
・長時間にわたって電話や窓口での対応を強要する
・正当な理由なく、特定の従業員への執拗な対応を要求する
・SNSなどに従業員への誹謗中傷を書き込む
なお、カスタマーハラスメントは、店舗や窓口での接客に限られません。
取引先の担当者からの不当な要求や暴言なども対象となるため、製造業、建設業、運送業など、一般消費者と直接接する機会が少ない企業でも対策が必要です。
一方で、顧客からの苦情がすべてカスタマーハラスメントになるわけではありません。
商品やサービスの不具合に対する正当な苦情や、適切な改善要求は、企業として誠実に対応する必要があります。
重要なのは、要求内容の妥当性と、その要求方法が社会通念上許容される範囲内かどうかを判断することです。
2.2026年10月から企業に義務付けられたこと
今回の法改正では、企業に対して、カスタマーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置を講じることが義務付けられました。
具体的には、主に次の取組が必要です。
① 会社の基本方針を明確にする
まず、会社としてカスタマーハラスメントを容認せず、従業員を保護するという方針を明確にする必要があります。
例えば、次のような方針が考えられます。
「当社は、顧客等からの正当なご意見やご要望には誠実に対応します。一方、従業員の尊厳を傷つける暴言、脅迫、不当な要求などに対しては、組織として毅然と対応し、従業員の安全と就業環境を守ります。」
このような方針を作成し、社内掲示や朝礼、社内メールなどを通じて従業員に周知します。
また、カスタマーハラスメントに該当する行為の例や、発生時の対応方法についても、あらかじめ従業員に知らせておく必要があります。
② 相談窓口を設置する
従業員がカスタマーハラスメントを受けた際に、安心して相談できる窓口を設ける必要があります。
中小企業の場合、必ずしも専任の担当部署を設置する必要はありません。
既存のハラスメント相談窓口を活用したり、人事担当者や経営者が相談担当者となったりする方法も考えられます。
ただし、窓口を設けるだけでは不十分です。
相談担当者が適切に対応できるよう、相談の受付方法、事実確認の手順、情報の取扱いなどを定めておくことが重要です。
また、相談したことを理由に従業員を不利益に取り扱わないことや、相談者のプライバシーを保護することも必要です。
③ 被害が発生した場合は迅速に対応する
実際にカスタマーハラスメントが発生した場合には、会社が速やかに事実関係を確認し、適切な対応を行わなければなりません。
例えば、次のような対応が考えられます。
・被害を受けた従業員から状況を聞き取る
・対応記録やメールなどを確認する
・必要に応じて担当者を交代させる
・従業員の心身の状態に配慮し、必要な支援を行う
・同様の被害を防ぐため、対応方法を見直す
特に注意したいのは、従業員に対応を任せきりにしないことです。
「お客様だから仕方がない」「何とか自分で対応してほしい」といった対応では、従業員を十分に保護できません。
会社が組織として対応する仕組みを整えることが重要です。
④ 悪質な行為への対応方針を定める
特に悪質なカスタマーハラスメントについては、あらかじめ対処方針を定め、実際に対応できる体制を整える必要があります。
例えば、暴力や脅迫などの犯罪に該当するおそれがある行為については警察への通報を検討する、執拗な要求に対しては管理職が対応を引き継ぐなど、具体的なルールを決めておきます。
必要に応じて、弁護士などの外部専門家と連携できる体制を整えることも有効です。
3.中小企業は何から始めればよい?
今回の義務化に対応するために、最初から大がかりな制度を導入する必要はありません。
まずは、自社の規模や業務内容に合わせて、次の5つを確認することをおすすめします。
□ 会社としてカスタマーハラスメントに対応する基本方針を作成したか
□ カスタマーハラスメントの具体例と対応方法を従業員に周知しているか
□ 従業員が相談できる窓口を設け、担当者が適切に対応できる体制を整えているか
□ 被害発生時の事実確認、従業員への配慮、再発防止の手順を決めているか
□ 特に悪質な行為への対処方針と対応体制を整えているか
これらに加えて、相談者のプライバシー保護や、相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止についても、社内ルールを整備し周知する必要があります。
既にパワーハラスメントなどの相談窓口を設置している企業であれば、その仕組みを活用することも可能です。
ただし、従来のパワーハラスメント対策だけでは、顧客や取引先からの迷惑行為に対応するための具体的なルールが不足している場合があります。
既存の社内規程や対応マニュアルを確認し、必要な内容を追加することが大切です。
4.対策を怠った場合のリスク
カスタマーハラスメント対策は、単に法律上の義務を果たすためだけのものではありません。
企業が適切な対応を行わず、従業員が精神的な不調をきたした場合などには、安全配慮義務違反として損害賠償責任が問題となる可能性があります。
また、法律に基づく必要な措置を講じていない場合には、行政による助言、指導、勧告などの対象となる可能性もあります。
さらに、従業員が安心して働けない職場では、離職率の上昇や人材確保への悪影響も懸念されます。
カスタマーハラスメント対策は、従業員を守ると同時に、企業の安定した経営を支える取組でもあります。
2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策はすべての事業主の義務となりました。
従業員数が少ない企業や、これまで顧客トラブルが発生していない企業も例外ではありません。
今回の法改正で重要なのは、問題が発生してから対応するのではなく、あらかじめ会社としての方針と対応体制を整えておくことです。
まずは、会社の基本方針の作成、相談窓口の整備、従業員への周知、被害発生時の対応手順の確認から始めましょう。
顧客への誠実な対応と、従業員の安全・尊厳を守ることは、決して相反するものではありません。
従業員が安心して働ける環境を整えるためにも、この機会に自社のカスタマーハラスメント対策を見直してみてはいかがでしょうか。
ご相談はお近くの社労士まで!
