会社をお辞めになる方へ、例えばこんなお話。
7月になりました。
梅雨のジメジメ全開ですが、いかがお過ごしでしょうか。
今日は、仕事を辞めたときの健康保険についてのお話でございます。
会社にお勤めのみなさんが、お仕事をお辞めになられた場合、社会保険を喪失いたします。
会社の人事担当の方が、「この人はうちの会社を辞めましたから、保険から抜きます」と手続きをいたします。
これを社会保険の喪失手続きと言います。
そうするとどうなるか。
退職の時に、会社の担当者へ返却してしまいますので、健康保険証が使えなくなります。
お勤めの間は、社会保険に加入していますので、病院へかかると治療費の3割をご自分で負担していたわけです。
あとの7割は健康保険協会が払ってくれていたのですね。
これがなくなります。
病院は10割負担です。
そんな殺生な!とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
ご安心ください。
そのために、市町村に国民健康保険という制度があります。
これは、強制加入ですので、社会保険に入っていない方は全員加入することが義務付けられております。
それで、会社をお辞めになった方は、国民健康保険の加入手続きをするわけですが、
このときに、
1.国民健康保険に加入する
2.社会保険の任意継続被保険者になる
の二つを選ぶことができるのです。
簡単に説明しますと、
1.は国民健康保険の被保険者になる、
2.は今まで入っていた社会保険の資格を継続する
ということでございます。
この二つ、毎月の支払い保険料額が違います。
安い方を選びたい!というのが人情でございます。
国民健康保険の保険料は、以下のように計算されます。
本人の収入+世帯人数分の均等割分
例:一人暮らしの方(年収200万円・川崎市在住)
医療分
200万円×6.92% + 31,880×1 = 138,400 + 31,880 = 170,280円
後期高齢者支援分
200万円×2.40% + 11,072×1 = 48,000 + 11,072 = 59,072円
介護保険分(40歳~64歳の方)
200万円×2.28% + 13,861×1 = 45,600 + 13,861 = 59,461円
合計:288,813円
これが1年間の保険料でございます。
さて、では任意継続の場合も計算してみましょう。
任意継続では、今まで会社が半分負担していた保険料もご自分で払うことになります。
例:一人暮らしの方(年収200万円・川崎市勤務・協会けんぽ加入者)
保険料(14等級・170,000円):202,572円
介護保険込(40歳~64歳の方) :236,268円
となります。
国民健康保険の保険料率は、各市町村によって違いますので、計算が面倒な方は窓口で試算してもらいましょう。
そして、大きな違いとしては、国保には扶養という制度がないことでございます。
扶養している家族が多い方は、任意継続の方がお得になる可能性が高いということでございます。
先程のように、具体例を挙げて計算してみましょう。
45歳男性、妻、子2人(年収600万円・妻子収入なし・他条件は上と同じ)
1.国保
医療分 :600万円×6.92% + 31,880×3 = 510,840
後期高齢者支援分 :600万円×2.40% + 11,072×3 = 177,216
介護保険分(40歳~64歳の方):600万円×2.28% + 13,861×3 = 178,383
合計:866,439円
2.任意継続
保険料(21等級・280,000円(上限)):333,648円
介護保険込(40歳~64歳の方) :389,080円
となります。
ここで重要なポイントは以下の2つでございます。
1.任意継続の保険料率は、最高で報酬月額280,000円の等級まで。
2.国民健康保険の場合、被扶養者という考え方がないため、世帯全員分の保険料がかかる。
その違いだけで、こんなにも保険料の差が出てしまうのですね。
国民健康保険の方には、年収が低い方向けの保険料減免措置などもありますので、一概に任意継続の方がいいとは言い切れないところもございます。
また、任意継続については、加入手続きの期限が退職日の翌日から20日間であるなど、注意するべき点もございます。
以上、会社を退職する際に、国民健康保険以外の選択肢も検討してみてはいかがでしょうか、というお話でした。
面倒だな、と思うところに、思わぬ利益が潜んでいるものですね。
ご自分の場合について、詳しく知りたい方は、ぜひ我々社労士をご活用くださいませ。